2017年7月7日

大切にしたい何かをはっきり感じた時

怯える胸に私は手を押し付けた

曖昧さを無くすということは強制的に

確かな覚悟を強制されるという

暗黙のメカニズムが作動する

その実務的な態度の容赦の無さは感じていて面白かった

しかししばらくそうしていると

不思議に怯えがリズムを失って

平安な凪が予め決められていたかのように

私の海に横一線の海平線を引いた

一人の深夜に私は私に手を叩いていた

長く痣のように付き合ってきた私の怯えは

単に女の持つ遺伝子の

悪癖に過ぎないと知ったからだ

 

譜奏85

2017年7月5日

怯えるように顔を出した桜が

幾つかの花びらに分かれて

風を柔らかくしている坂道を

黄色い帽子を乗せた子供たちが横切っていく

花にも負けないほどに煌めいて

思えば私は滑稽なほど

親の愛を受けて育てられた子供だった

ワガママな思い出の数々が

父や母の切ない愛に繋げられていく

例年になく寒暖の激しい今年の桜はきっと

早々と吹雪いてしまうだろう

その花雪の中で私は幼い子のように言葉を落とす

悲しみは

生きることによって意味を持つのだと

 

譜奏84

2017年7月3日

人は過ぎてきた時間を

その中にいた自分を振り返る

これで良かったのだろうかと

間違って歩いてきてはいないだろうかと

小さな出来事にまで想いを通わせて振り返る

そんな時に必ず出てくる

もしもという名の悪魔

この悪魔の役割は

心の窪みに映写機を当て

魅力的な幻想映像を際限なく流し続けるという

分かり易いペテン師族だ

決してリズムを合わせてはいけない

人生に反省は必要とされるけれど

後悔などゼロベースで不要なものなのだから

 

譜奏83

2017年6月30日

人は精神を成長させて

広い心を持ち

思いやりを示し

やがては慈愛を放つ者にと希う

社会の良識もそして

潜在的におそらく当人も

しかし現実の敵は強敵だ

それはもちろん憎しみ

憎しみはしばしば哲学者のように言う

精一杯積み上げた気力が萎えそうな時に優しく

荒みつつある自分を知る時に労わりを見せながら

何も苦しむことはないのよ

だから元に戻してあげたでしょ

 

譜奏82