私は同じ夢を見る
何度も同じ夢の中に入っていく
意識の端切れのような夢は
終わったかと思ったら
またその場面から続いて
私は裸足で砂の道を歩いていたりする
ある時私は気がついた
夢の中では私は私を見ているということに
色彩のない二人の私は
透明なスクリーンに遮られて断絶されていた
乾いた風に髪を揺らしている映像の中の私の空に
見覚えのある星が見えた
その位置で南だと分かった私は何故か怯え
もう二度と彼女を見ることはないと感じていた
譜奏89
私は同じ夢を見る
何度も同じ夢の中に入っていく
意識の端切れのような夢は
終わったかと思ったら
またその場面から続いて
私は裸足で砂の道を歩いていたりする
ある時私は気がついた
夢の中では私は私を見ているということに
色彩のない二人の私は
透明なスクリーンに遮られて断絶されていた
乾いた風に髪を揺らしている映像の中の私の空に
見覚えのある星が見えた
その位置で南だと分かった私は何故か怯え
もう二度と彼女を見ることはないと感じていた
譜奏89
風に剥がされた葉が
私の時間に落ちた時から
漂い始めた蒼い水蒸気のような霧は
やがて一つの形に安定して
私の衝動の洞へと向かい
微小な水玉の群れになって
その冷気で
私自身さえ気がつかなかった
私の熱の白い膜を解いていた
合理を伴えないまま隷属して
憑かれるように足掻く私を
ありきたりな必然を傍観するように予見して
いつからか私の霧は赤みを帯びる
私自身がその蒼に寄生していくために
譜奏88
命に限りがあることを人は知っている
しかし多くの人はそれを口にせず
懸命に生きることに目を向けて希望を探すように生きていく
または人生は楽しんで生きるものだと言い頷く
死の恐怖に目を塞ぐように
そしてそう生きることを肯定し合い
責める人は誰もいない
その恐怖に侵されまいとするように
素朴に私の実感はその中には無さそうだ
そもそも死への考え方に正誤などないだろうと感じている
ただ死は正すだろうと思う
陰を寄せて
時が尽きるまでの仮の時間のフレーズを
置き去ってきた私自身の鼓動のリズムそのものを
譜奏87
考えて
よく考えて生きていくように
教えられてきた
もう一つ
正しいか間違っているかだけが
判断の定規だと
促されてきた
衝動は危険
激情は後悔
何よりも安心なエリアを離れてはいけないと
最後の息を吐き出す時
人は胸の灯りを追うだろう
その光点の地はきっと
自分だけが知るというのに
譜奏86