2017年7月17日

私は同じ夢を見る

何度も同じ夢の中に入っていく

意識の端切れのような夢は

終わったかと思ったら

またその場面から続いて

私は裸足で砂の道を歩いていたりする

ある時私は気がついた

夢の中では私は私を見ているということに

色彩のない二人の私は

透明なスクリーンに遮られて断絶されていた

乾いた風に髪を揺らしている映像の中の私の空に

見覚えのある星が見えた

その位置で南だと分かった私は何故か怯え

もう二度と彼女を見ることはないと感じていた

 

譜奏89

2017年7月14日

風に剥がされた葉が

私の時間に落ちた時から

漂い始めた蒼い水蒸気のような霧は

やがて一つの形に安定して

私の衝動の洞へと向かい

微小な水玉の群れになって

その冷気で

私自身さえ気がつかなかった

私の熱の白い膜を解いていた

合理を伴えないまま隷属して

憑かれるように足掻く私を

ありきたりな必然を傍観するように予見して

いつからか私の霧は赤みを帯びる

私自身がその蒼に寄生していくために

 

譜奏88

2017年7月12日

命に限りがあることを人は知っている

しかし多くの人はそれを口にせず

懸命に生きることに目を向けて希望を探すように生きていく

または人生は楽しんで生きるものだと言い頷く

死の恐怖に目を塞ぐように

そしてそう生きることを肯定し合い

責める人は誰もいない

その恐怖に侵されまいとするように

素朴に私の実感はその中には無さそうだ

そもそも死への考え方に正誤などないだろうと感じている

ただ死は正すだろうと思う

陰を寄せて

時が尽きるまでの仮の時間のフレーズを

置き去ってきた私自身の鼓動のリズムそのものを

 

譜奏87

2017年7月10日

考えて

よく考えて生きていくように

教えられてきた

もう一つ

正しいか間違っているかだけが

判断の定規だと

促されてきた

衝動は危険

激情は後悔

何よりも安心なエリアを離れてはいけないと

最後の息を吐き出す時

人は胸の灯りを追うだろう

その光点の地はきっと

自分だけが知るというのに

 

譜奏86