柔らかな陽射しが苦悶して
破れていく稜線に目を背けた午後
私の澱を揺らした衝動は
時の切り絵を刻むような
冬去りの風を
幼い子のように
破線の縁に追いやっていた
私はかすかな記憶の中の花々を
胸に挿していた私を
悪意のまま絵の欠片に写し
風音の消えていく響きに叫ぶように
唇と息の嗚咽を圧えようと身構えた
私はただ自失のように背いていたかった
破線を滲ませる色彩の彩りそのものに
譜奏81
柔らかな陽射しが苦悶して
破れていく稜線に目を背けた午後
私の澱を揺らした衝動は
時の切り絵を刻むような
冬去りの風を
幼い子のように
破線の縁に追いやっていた
私はかすかな記憶の中の花々を
胸に挿していた私を
悪意のまま絵の欠片に写し
風音の消えていく響きに叫ぶように
唇と息の嗚咽を圧えようと身構えた
私はただ自失のように背いていたかった
破線を滲ませる色彩の彩りそのものに
譜奏81
捨てられていた人形は
雨に打たれている姿に憐れみを覚えた相手が
聞きたいと思うことを言って
聞いた人を思い通りに動かす
邪悪魔だった
雨は包んでいる毛をみすぼらしくさせて
優しい心を傷つけるには
一番の方法だと邪悪は知っている
優しい心は聞く
寒いでしょ?どこからきたの?と
嗤うと悲しい顔になる人形は
使い慣れたいつもの絶望で答える
今あなたの心からよと
雨で刺すように
譜奏80
過ぎてきた時間は拒めない
日常音に紛れていないといつまでも
遠い潮騒のように私の耳にまとわりつく
未来との距離も私には同じようにしか思えなかった
足に海水の感触があるまで
ただ歩き続ける
わずかな波音の気配を聴き分けようとしながら
しかし歩いている時の私はいつも
目が塞がれて裸足なのだ
時の縄に引かれて
どんなに心を揺さぶられても抗う力を持たない
嘘のない者のように
帰るべき潮騒に
還る者のように
譜奏79
物心がついて
私の初めての違和感は
大人になったら
立派な人になることが一番と
多くの人が思っているということを知った時だった
成績も学校も職業も容姿も運も
比べられる
結果という鏡の前で
当たり前のように
しかしそれは正しくても単細胞でも
私にとってはどちらでもいいことだった
私は動物的に分かっていたから
私にとって必要な人と言えるのは
迷いを分かち合える人だけだということを
譜奏78