2017年7月5日

怯えるように顔を出した桜が

幾つかの花びらに分かれて

風を柔らかくしている坂道を

黄色い帽子を乗せた子供たちが横切っていく

花にも負けないほどに煌めいて

思えば私は滑稽なほど

親の愛を受けて育てられた子供だった

ワガママな思い出の数々が

父や母の切ない愛に繋げられていく

例年になく寒暖の激しい今年の桜はきっと

早々と吹雪いてしまうだろう

その花雪の中で私は幼い子のように言葉を落とす

悲しみは

生きることによって意味を持つのだと

 

譜奏84