2019年12月9日

ものすごく偏ったタイプのおばあちゃんになると

私はいつからかそう思って生きてきて今もそれは変わらない

そうなるときっと私は酷い孤独の中で日々を過ごしているのだろうけれど

そこに恐怖を感じるイメージを私は一度として持ったことがなかった

何故なら私の胸には踊るように運命を生きていくというフレーズが

自身の生を感じた瞬間からずっとリフレインしていたからだ

傲慢。貪欲。

あるべき人の姿としては聞こえは最悪でしかないのだけれど

差し当たって言葉にすればこの者たちが私には一番しっくりきている

ただし尊大に振る舞う運命にははっきりと私はリクエストを伝えている

それはこの一卵性の双生児の食料が私が思い描く夢の実行にあるという

その一点に尽きるという唯一の現実だ

だから私はこのように生かされているんでしょと牽制しているのだ

神が奇跡を起こすなら悪魔だって奇跡くらい平気で起こせるはずなんだから

 

譜奏464

2019年12月6日

小屋の楽屋に入ると脂粉の香りが充満していた

何度か打ち上げで顔を合わせた照明さんや若い踊り子に会釈して

吊るし衣裳をかき分けて奥に行くと彼女はまかないのカレーを食べながら

ごめんごめんちょっと待っててすぐ着替えるからと私に微笑んだ

鮮やかな銀飾りのドレス姿だったがむしろその鮮やかさが

今日の私には残酷な華やかさに見えて一瞬視線を落としていたようだ

彼女は高校を中退して男の子を産んでダンサーになると言って

突然着の身着のままでひどい雨の日に私を訪ねて来たことがあった

何故かそんな昔のことを思い出していたら

彼女は私をみつめて見透かすようにニヤッとして悪戯っ子のように

あなたはちょっと辛辣だけど正直だよねと言って

だから考えてることがわたしには全部わかっちゃうわよと笑って

でも大丈夫なの

嘘は毎日だからと言った

 

譜奏463

2019年12月4日

ケガから鎮痛剤依存になって酷い酒浸りになっていく父を憎んでいた

根っからの昔気質の職人だったから仕方ないのかもしれないけど

そんなの弱すぎるって辛い気持ちの方が強かったからね

すぐに死んじゃったわ、身体がもつ訳ないもんねあんな暮らししてたらさ

さびしい通夜で悲しかったけど私だって憎まなきゃやってられなかったの

でもバチが当たった感じになっちゃったわ、それからのワタシの人生

合理的に論理的に生きようと思う人間になっちゃって

最後の最後は自分じゃない何かに頼るようになっちゃって

何をやっても裏目に出る人生が始まっちゃったの

結婚まで考えたノウハウ男にいいようにオモチャにされてステられて

どん底気分でもういいや死んじゃおうかと思った時

ふっと気づいたの、なんだ、私、全然自分を生きてないじゃないって

私こそ何も考えないで生きてきたバカな依存者じゃないかって

その時初めて身体中の憎しみを吐きだすようにワタシ泣き明かしていたの

 

譜奏462

2019年12月2日

誰かのではなく

何かの奴隷のように生きるという精神質が女にはあるのかもしれないと

不快な重い夢を見て冷たい汗に起こされた私は

呼吸のように点滅しているデジタル時計を睨みながら

自分の中に顔を出したぬめりとした触感の感覚に腹を立てていた

何の為に神様はこんな異物をわざわざリレーションしてきたのだろう

女族に必要なものは必ず知らせ気づかせるために

ご丁寧にその影まで作ってくれたということなのだろうか

どんなに譲っても不可解でしかないけれど

例えば悲しみを紛らせるために苦しみに生きようとするのも

女が女を生きたという絵に納まるような気がしないわけじゃないけれど

でもやっぱりそれは良くない、むしろ女って

大切な扉の鍵は誰にも見つけられない妖精の置物の下に

そっとそして永遠に隠したままのほうが物語になるのだから

 

譜奏461