2019年8月21日

言葉を同調の証しとして依存する

注視線などの熱を好んで胸に貯める

思い出と現在を行き交わせ同じ線上に引く

弱さを庇う母性を快楽として味わう

定期的に悲しみという養分を摂取したがる

淋しさを乾燥させるのを嫌う

最後には利害を露わに出すことが正直だと思っている

自分に関係のない美しさは排他する

愛を妄信して動かないことを肯定する

晴れやかな運命への期待から離れない

これらで調理されたモノを食べ続けると

起点さえ曖昧な孤独に堕ちていく人になる

以上が無味無臭の劇薬

女という性の破滅のレシピ

 

譜奏418

2019年8月19日

時という生物は

最小の原子のその固有振動数によって

今のこの一瞬を正確に刻んでいると解明されているらしい

しかしそう説明されても私には何の実感も湧かないけれど

むしろ無機質に思えるその川が引き起こす無限の生命の息吹きは

私には一種の魔景にしか映っていない

時が全てを癒してくれると言い聞かされて

それを鵜呑みにしてきた根拠は誰もが探せていないだろうと思う

影さえ持たない幻なのだからと

今は私はそう考えるしかない

だから探りを入れるフィクションと悟られても

気分が悪くなるほどの劇的な不幸のプロットを立てて

綿密に計画した完全なプランを悪魔と売買しても

私はある種の幻覚を手に入れたいと思うようになってしまっている

 

譜奏417

2019年8月16日

人生の主語を複数形に変えるように何かに委ね

自身の単数さえ無機物なモノとして預けてしまえれば

かつて一度も傷ついたことがないかのごとく

人を愛し続けていけるようになるのかもしれない

晴れやかに生きたい

できる限り人々の役に立って世に用いられて

そして叶うなら美しい記憶に残されて

私はただそう希って生きてきた

しかしその前提の思慮にさらなる分別が必要なのだとしたら

自分を生きるという自分とは誰なのだろうと思う

何かに近づいていくほどに遠ざかるような不毛な不安の中

私は蒼の静寂だけが支配する夜をただ彷徨い歩いて

迫りくる心の死を予感しながら自分が抱きしめていた赤児を

教会の前に捨てた女のような虚ろな淋しさだけを胸に感じていた

 

譜奏416

2019年8月14日

デジタル時計の数字が朝か夜かも分からないほど眠ったのに

まだ起きようとしない自分に腹を立てて

私は蛇口から飛び出してくる水を殴りつけるように顔にぶつけた

毎夜訪れる示唆のような罰のような夢に

私の精神はなす術もなく萎んだ果実のようになっていく

何よりも誇らしいほどに瑞々しかった果皮の記憶が

悔いの澱をかき混ぜるように私を打ちのめしていた

もしかして

私は私自身に潜在する何かの化身の起点を知ることを

圧されることに紛れて防御しようとしているのだろうか

私の思考や価値観の始まりを本当は知っているのではないだろうか

やはりこの実感を何かの罰としか私は感じられないでいた

だったらもう二度と眠らない

私は唇を歪めてそう言って濡れたバスタオルを鏡に投げつけていた

 

譜奏415