人生の主語を複数形に変えるように何かに委ね
自身の単数さえ無機物なモノとして預けてしまえれば
かつて一度も傷ついたことがないかのごとく
人を愛し続けていけるようになるのかもしれない
晴れやかに生きたい
できる限り人々の役に立って世に用いられて
そして叶うなら美しい記憶に残されて
私はただそう希って生きてきた
しかしその前提の思慮にさらなる分別が必要なのだとしたら
自分を生きるという自分とは誰なのだろうと思う
何かに近づいていくほどに遠ざかるような不毛な不安の中
私は蒼の静寂だけが支配する夜をただ彷徨い歩いて
迫りくる心の死を予感しながら自分が抱きしめていた赤児を
教会の前に捨てた女のような虚ろな淋しさだけを胸に感じていた
譜奏416