2019年1月11日

夢の中でしか思い出せないデッサンのような街を

粗い鉛筆の線で書かれた私が風に吹かれて歩いている

頬が丸くなって切ったことのない髪が短くなっていた

春の風が恋しいと思えるほど尖った風の中で

私は何処かに向かっている意識もなく

さらに歩いている実感さえ持っていなかった

ささやくようにかすかな雨の匂いがしていた

もし匂いを押しやって雨粒が落ちてきたら

この仮の絵にはきっと

雨のための新しい線が引かれるのだろうと思っていた

できることなら私はその線で重ねられて遮断されて

形を失くした雑線になっていたいと思った時

サテンのようにサラサラと揺れる髪が目に入って

この髪が消えてしまうのは少し悲しいとも思っていた

 

譜奏323

2019年1月9日

絆という言葉が私は嫌いだ

もしお互いがそう感じているのなら

きっとその言葉は二人の間で交わされない

保証

そして確認

人が生きていく上で避けられない保守行動と理解していても

その類いの全てが私には苦手なことだった

若さで尖っていた頃は浅ましいとさえ思っていたほどだ

年をとったらどうなるのだろうと思った日があった

そしてバランスの取れた穏やかさの中にいる自分を思い浮かべたりした

今となっては笑ってしまうしかないけれど

いつの時も人と人との始まりは曖昧なものなのに

終わりは何故か同じようになっていく

それが私には何かの罰のように思えてならない

 

譜奏322

2019年1月7日

不満を抱え込むのが習慣になっているような生き方をして

悲しみを抱く人の心は暗い水面に滑り

揺らぐ微光のように無邪気に惑わされていく

崇高な哲学者を気取る運命は運命を与えるだけでは満足せず

結末を覗き込んで小心者の本質が暴かれる

私の不可解な衝動の一瞬に西風が止まって

一瞥して関心を持たずに消えた後

すぐに淋しさの断片を寄せ集めたような夢に落ちて

私は思い出しそうだった置き去りにした何かの記憶が

無数の海に呑み込まれて離れていく距離を感じていた

人の人生は

始まり方はいつも違うのに

しなやかに微光の群れが揺れるように

人の終わり方はいつも同じようになっていく

 

譜奏321

2019年1月4日

星のカケラを3つ拾って地面に三角に置くと

その三角に青緑の水が現れてその水に指が触れると

深い湖に引き込まれて二度とお家には帰れないと

わたしとその子は信じていた

お腹がすくのとノドが渇くこと以外に

わたしたちは現実ということを知らずに

空想の世界の現実の中を走り回って遊んでいた

双子のように同じ顔をしているその子の妹は

5さいになっても話せなくてアーウーと唇を尖らせるから

わたしはアーウーちゃんと言って

わたしも口を尖らせて唇を合わせたりしていた

小学生の時に姉妹はダウン症だと聞かされて

すぐに疲れちゃう病気なんだ、と言ったら大笑いした母に

プクっと拗ねて唇を尖らせた日を懐かしく思い出す

 

譜奏320