雨曜日
風曜日
太陽日
星隠れたり
月流れたり
海騒いだり
人は産まれ
人は死に
人は愛を遺すのか
吟遊詩人の歌あれば
問わず語りに
流浪に堕ち
誰に問うのか
永遠を
譜奏284
雨曜日
風曜日
太陽日
星隠れたり
月流れたり
海騒いだり
人は産まれ
人は死に
人は愛を遺すのか
吟遊詩人の歌あれば
問わず語りに
流浪に堕ち
誰に問うのか
永遠を
譜奏284
水に棲むピアスの輝きが消えていくように
ビルの夜灯を写していたガラス窓に雨が落ちて
夜に塞がれた時間が黒い煤のように
私を息苦しくさせる時
私が天使のように振る舞えば
その反動の力で悪魔の欲望が深くなり
深くなった欲望は何かを実行したい衝動に苦しむと
天使はしたり顔で囁いてくる
では私は悪魔を振る舞えばいいということなのだろうか
そういう話になる
人はいつも自分の心とせめぎ合いながら生きていく
その暗がりに胞子を落としたような
天使という悪魔という仮装言葉が
私には壊れにくい玩具言葉にしか思えない
譜奏283
過去から今に線を繋いで未来を警戒して
誰しもが自分を知りたいと希うことを
私は好意的な気持ちを持って同調してきた
私の好奇心の根の触角もずっとそこに向いていたから
その願望は疑いようがない位置にいて
考える余地の凹凸さえ感じることができなかった
何度か思い返してもその率直な実感しか残っていない
しかし自分が呼吸していることが動物のようだと腑に落ちて
今私が考え行動していることのすべてが
知りたい自分から逆線を引いた答なのではないかと思ったら
明らかに私の見当識が動揺して投射影のように
あっさりと実体を放棄していく信号波を出し始めていったのだ
何かの童話に似ていると思った
私はそのお話しの鳥籠にいた名もない鳥だったのだと思った
譜奏282
今日も額縁屋の角隅に置かれたままの
私が初めて見かけた時から何年も売れないままの
なぐり描きされたような樺のリトグラフを
私は立ち止まって少し近づいて見ていた
私にとって変化の連続だったこの数年が
時の点座のように白線に遊んで重なっていってしまう
絵にはこういう不思議な力があることを
私は行きずりに感じて近づかなかったのかもしれない
すでに私は立ち止まってしまった自分を後悔していた
喧騒を透過した風音に紛れて
あなたに真実を告げる人は誰もが目を背ける乞食のような
みすぼらしい姿でいつかあなたの前に現れると
突風がからかうように
私に言った気がしたからだ
譜奏281