2018年10月22日

飾っていただけのバラードを聴いていて

その歌詞のフレーズに激しく心を掴まれた夜

私は今日そうなる気がして聴いていた気がして

自分が少し嫌いになった

必然という単語が意識を疼かせていたからだ

この便利な単語は人に起こる不条理な出来事の対抗策のように

あらゆるところで都合良く使われてきて

私をうんざりとした気分にさせる代表格の言葉だった

人が感じようとしている必然は

自分自身が都合良く捏造しているものなのではないか

そんな疑いを持っていたのに無邪気に放置して

私も依存しているところがあったのかとがっかりしてしまった

この言葉は運命のカテゴリにしまっておくべき言葉である

人間が気安い媚び言葉で使うのは不謹慎でしかない

 

譜奏288

2018年10月19日

飾ることのないまたその人は

ネコも負けるくらいの目ヤニのまま

前日とまったく同じ服装で出てきて

寝ぐせ隠しの帽子を深くかぶって私にヨゥ、と手を上げた

私は今日彼にどうしても聞きたいことがあった

真剣に考えれば考えるほど

音楽ということが私には言葉で整理できていなかったからだ

何故か気づかれないようにあやしている自分が可笑しかった

韻律や、人間はそれぞれの韻律の世界に支配されて生きてる

ぼおーっとしてるかと思えば突然抉ぐるようなことを言う

このややこしい不思議なネコ

もう少しかみ砕いて私に解るように言ってよと思って

線になるくらい頑張って横目で助手席を見たのに

やっぱり寝ていたの目ヤニのまんまで

 

譜奏287

2018年10月17日

抽象画のような糸口のない孤独を隠して

私は単色になった朝のドアを開ける

出生の分からない概念を立体写真のように疎ましく

すぐにも破り捨てたいと思いながら

そうしてできる陥没したような空洞をより怖れて

怖れる自分をさらに疎ましく嫌悪して

誰かが言った

人生は回り回るメリーゴーランドだと

いかにもムリのある比喩と感じながら

私が考えることにブレーキをかけて

最後にはその比喩に緩和されることを受け入れていたのは

習慣的な単なる心の癖なのではと思った

堆積を潰して怖れの空洞を真新しいキャンバスと気づけば

ただそれだけで私の絵は自由に描がかれていたのだから

 

譜奏286

2018年10月15日

心にタトゥーが彫れるなら

透明と無色と薄い白色のその結晶を砕いて

私は水溶性の青に変わりながら

そのまま線の中に水棲して

誰にも見られない私でいたいと思っていた

火焔

私の心の始まりの地に

いつからか生まれついた時からなのか

形を変え続ける炎があることに

私は物心がついた頃からはっきりと気がついていた

私自身をも灼くその熱は何のためにあるのだろうと思う

何故か刻んで一つの形にと抗う私に

灰になっても残る

そんな確信だけが赤々と私の地表を揺らし続けていた

 

譜奏285