2018年10月3日

アトレに奏でられることを必然としていた一弦は

蒼い恋と紅い夢の二弦を手に入れようと

月を見上げては急いで大人になることばかりを考えていた

美しすぎる旋律が空想の中でも身を熱くして

くり返す息さえ苦痛に感じさせていたからだ

調和

そしてその素敵過ぎるハーモニーの響き

私はただその中にいられればいいと願い

気づかないままに生きる備品を揃えるかのように

蒼と紅を追い求めることに憑かれていた

しかし何かが知らされるような不安を確かめようとした夜

その三弦は苦しむような不協和音を出して

私を驚かせ打ちのめし諭すように貴方は貴方という

幻想の一弦を奏でる重い中毒者だったのだと知らせていた

 

譜奏280

2018年10月1日

知らない子が眉を寄せてわたしを見ていて

パラソルの下にいたわたしと目が合って

わたしは少し微笑んだけど少女は見ているだけで

飽きてきたから目をそらそうとしたら

突然舌を出してグレープ!と言って太陽のように笑った

確かに少女の舌は紫色だった

わたしもカキ氷が食べたくなって買ってもらって

でもイチゴ味にして

苺が良いの?と聞かれてイチゴが好きと言って

赤くなるから!と言って舌を出した

そばにいた数人の大人が笑った

その時胸のあたりで小さな時計のような音が聞こえていた

私が後年表現者という者になりたいと希った鼓動は

あの夏の日の光が波のように打ち寄せたものなのかもしれない

 

譜奏279