2018年10月1日

知らない子が眉を寄せてわたしを見ていて

パラソルの下にいたわたしと目が合って

わたしは少し微笑んだけど少女は見ているだけで

飽きてきたから目をそらそうとしたら

突然舌を出してグレープ!と言って太陽のように笑った

確かに少女の舌は紫色だった

わたしもカキ氷が食べたくなって買ってもらって

でもイチゴ味にして

苺が良いの?と聞かれてイチゴが好きと言って

赤くなるから!と言って舌を出した

そばにいた数人の大人が笑った

その時胸のあたりで小さな時計のような音が聞こえていた

私が後年表現者という者になりたいと希った鼓動は

あの夏の日の光が波のように打ち寄せたものなのかもしれない

 

譜奏279