知らない子が眉を寄せてわたしを見ていて
パラソルの下にいたわたしと目が合って
わたしは少し微笑んだけど少女は見ているだけで
飽きてきたから目をそらそうとしたら
突然舌を出してグレープ!と言って太陽のように笑った
確かに少女の舌は紫色だった
わたしもカキ氷が食べたくなって買ってもらって
でもイチゴ味にして
苺が良いの?と聞かれてイチゴが好きと言って
赤くなるから!と言って舌を出した
そばにいた数人の大人が笑った
その時胸のあたりで小さな時計のような音が聞こえていた
私が後年表現者という者になりたいと希った鼓動は
あの夏の日の光が波のように打ち寄せたものなのかもしれない
譜奏279