今日も額縁屋の角隅に置かれたままの
私が初めて見かけた時から何年も売れないままの
なぐり描きされたような樺のリトグラフを
私は立ち止まって少し近づいて見ていた
私にとって変化の連続だったこの数年が
時の点座のように白線に遊んで重なっていってしまう
絵にはこういう不思議な力があることを
私は行きずりに感じて近づかなかったのかもしれない
すでに私は立ち止まってしまった自分を後悔していた
喧騒を透過した風音に紛れて
あなたに真実を告げる人は誰もが目を背ける乞食のような
みすぼらしい姿でいつかあなたの前に現れると
突風がからかうように
私に言った気がしたからだ
譜奏281