2018年10月5日

今日も額縁屋の角隅に置かれたままの

私が初めて見かけた時から何年も売れないままの

なぐり描きされたような樺のリトグラフを

私は立ち止まって少し近づいて見ていた

私にとって変化の連続だったこの数年が

時の点座のように白線に遊んで重なっていってしまう

絵にはこういう不思議な力があることを

私は行きずりに感じて近づかなかったのかもしれない

すでに私は立ち止まってしまった自分を後悔していた

喧騒を透過した風音に紛れて

あなたに真実を告げる人は誰もが目を背ける乞食のような

みすぼらしい姿でいつかあなたの前に現れると

突風がからかうように

私に言った気がしたからだ

 

譜奏281