◯を×と△を□と言うような
明らかな嘘はついてこなかったような気がする
そんな明らかさには自分が剥がれていく軋みを感じていたからだ
そして私の周囲は誠実さに溢れていて
そんな嘘をつく必要も機会も
なかった気がしている
固形物のような真実という言葉とその背景に
まだ価値があると思っていた頃
私は人には真っ直ぐな一直線の道が
それぞれに与えられていると信じられていた
しかし冷静に思い返してみるとその正直な手応えは△に満たない
△が私の□に2つも3つも共棲していたという実感の方が
今寂しい玩具のようにしっくりと
胸に落ちているのを感じている
譜奏179