2018年2月5日

高層ビルのラウンジの窓際席に座って

私は黒いマッチ箱にしか見えない車や

虫たちのような人の流れていく景色を見ていた

こうしていると私はいつも同じことを考える

人が唯一解り合える共有は痛みの他にはないのだろうと

その証に時に痛みを癒す養分など含まれていない

ただ愚鈍に風化させるだけの役割でしかないのだと

この店ではこの国では珍しくファドが流れる

遠く離れた異国の地で紡がれた異端の音楽

哀調のファド

そのアルペジオが奇跡に問うように漠然と奏でられて

そして私は考える

私は何故ここにいるのだろうと

今私の運命は空腹なのかも知れないと

 

譜奏177