何かの思いが宿っても
言葉にするのは
間違い
思いと言葉は
正反対のもの
正しいことをするのも
過ちを確認しているだけ
欲望の一つに過ぎない
比較して選んで過ぎる時間は
心を逃げられない虚ろに変えて
罪の味がする
知らぬふりして
黙っているのは
嘘と同じ
譜奏183
何かの思いが宿っても
言葉にするのは
間違い
思いと言葉は
正反対のもの
正しいことをするのも
過ちを確認しているだけ
欲望の一つに過ぎない
比較して選んで過ぎる時間は
心を逃げられない虚ろに変えて
罪の味がする
知らぬふりして
黙っているのは
嘘と同じ
譜奏183
2コーラス目の変奏は何に媚びようとしたのだろうか
水槽の中の熱帯魚が雨の音を探すように顔を上げて
部屋に流れているヴィオラの三重奏に近づいてくる
ビスクドールの目も電池で保たれているように強い
泳いでいる命と命を模った愛玩具と
それを意識して夜を過ごしている肉体としての
私の命とその時間
この空間が祝福されているように感じた頃があった
全ての韻律が白の霧のように奏で合って
私は花回廊の色彩の中で玩具のように眠るのだと
しかし退屈なカデンツァから離れるように
いつしかそんな夜から私だけがいなくなっていた
もう若くないエンゼルフィッシュが色線を薄くして
媚びもなく弱い息を苦しむように
譜奏182
赤と白が混ざると色彩は淡くなっていく
青と緑を混ぜるとどんどん重い色調になっていく
一つの個体が他と関わる時
そこに順当な新しい個性が生まれることは少ない
人が幸せに生きることを目的にして生きると
その時点からの偏りによって見失うものが出てくる
そしてそのように見える人たちを私は嫌っているようだ
捻れたように堕ちて
荒んだ態度を隠さなくなった人たちも私には不快感しかない
息を2度深くそして浅く落とした後に
私は匂い月の青に絡む白い刺青飾りを見上げ
予め決められた旋法のコードに埋もれて
叶うならその単音にと希う自分を感じていた
ただ灰のようにあればと
譜奏181
どんな罰も足らない
心の望みを突き止められず
望まないままに拒めず
無為の流れに時を奪われて
胸の海に沈む星を見上げて
整えた夢を口走った私の
背信
人は何故人生という堆積を重んじるのだろう
それが生命を組成するロジックなのか
静かな鈍痛が教えるように私の中で鼓動する
意味という化身が堆積を組成しているのなら
そうであるのなら私の背信は
罰を認識する以前に
どんな罪も足らないということになる
譜奏180