2017年7月21日

十字架に絡みつくアイビィのように

私の自覚していない欲望の形が

意味もなく整った構図になって

浴びた陽の葉先になって伸びていく

何故気がついた時には

私はいつも砂浜を歩いているのと聞いたのに

淡い色に同化していくのは一つの死と言えるから

悲しんでもいいよと海が言った気がしたあと

それは言葉にできることなの?と

私は言い返したかったけれど

自制するように海風が吹いてきたので

私はただされるがままに立ち竦んでいるしかなかった

構図の中で意識を持たない私こそが

最後のデッサンなのだと知ったからだ

 

譜奏91

2017年7月19日

量子が遊ぶ点描のように

雨上がりのアスファルトの背に密やかに

淡く注ぐ落ちし煌き

月光色

私が確かにここに立っていることを認め

その本質へ向かおうと願うことを知る

仄かなだけの光

仮装とも言えず

本質とも言えず

そのどちらでさえ

どちらでもないと言えず私は

ただ光をなぞる

今はそれでいいと言葉になりそうな息を

月に殺して

 

譜奏90

2017年7月17日

私は同じ夢を見る

何度も同じ夢の中に入っていく

意識の端切れのような夢は

終わったかと思ったら

またその場面から続いて

私は裸足で砂の道を歩いていたりする

ある時私は気がついた

夢の中では私は私を見ているということに

色彩のない二人の私は

透明なスクリーンに遮られて断絶されていた

乾いた風に髪を揺らしている映像の中の私の空に

見覚えのある星が見えた

その位置で南だと分かった私は何故か怯え

もう二度と彼女を見ることはないと感じていた

 

譜奏89

2017年7月14日

風に剥がされた葉が

私の時間に落ちた時から

漂い始めた蒼い水蒸気のような霧は

やがて一つの形に安定して

私の衝動の洞へと向かい

微小な水玉の群れになって

その冷気で

私自身さえ気がつかなかった

私の熱の白い膜を解いていた

合理を伴えないまま隷属して

憑かれるように足掻く私を

ありきたりな必然を傍観するように予見して

いつからか私の霧は赤みを帯びる

私自身がその蒼に寄生していくために

 

譜奏88