水彩の淡いパステル
春を待ち
慟哭を避け
一花の生涯を
華やぐ筆に乗せて
彩らんと
高ぶる時
選べし色は
運命は
邪気の無い企みにこそ
宿ることを
知る由もなく
絵色は伸びやかに
水に戯れし
譜奏65
水彩の淡いパステル
春を待ち
慟哭を避け
一花の生涯を
華やぐ筆に乗せて
彩らんと
高ぶる時
選べし色は
運命は
邪気の無い企みにこそ
宿ることを
知る由もなく
絵色は伸びやかに
水に戯れし
譜奏65
心が落ち着かない星消えの夜
いつもの静寂が機嫌を損ねて
悪意を向けるように
私に孤独を投げつけてきていた
明日になれば
いや夜明け前には
またいつものように気配を変えると
解っていてもやはり私は萎縮してしまう
萎縮は夜に逃れる私にとって
最大の罰なのに
明日を怖れていた私は今夜は囚われまいと目を見開いた
すると静寂は突如ピアノの倍音を殺すような呻きを漏らして
まるで私自身のようになって
夜に怯えを見せ始めたのだ
譜奏64
何かに迷ったら
迷うほどに選択肢があると考え
苦しいことがあったら
私は平安を知っているからと捉え
悲しみの時は
理を捨てられる自分であると
受け止める
それらは概ね
豊かなことだ
しかし愛
愛だけは試される
それは愛そのものが
嫉みの本質に
苦しんでいるせいだろう
譜奏63
冬の陽が
私の手を透かしてじゃれる午後
私は
私という主体を失くした後の季節に
この陽を揺らす風になれたらと
誰にともなく微笑んでみせた
思えば私は
私自身さえ懐かしいと思えることが
日常的にある人間だった
不思議とは思わない
特別とも感じない
だって花は花の色で
人は人の形で操られるように
生まれてくるのだから
譜奏62