2017年5月22日

水彩の淡いパステル

春を待ち

慟哭を避け

一花の生涯を

華やぐ筆に乗せて

彩らんと

高ぶる時

選べし色は

運命は

邪気の無い企みにこそ

宿ることを

知る由もなく

絵色は伸びやかに

水に戯れし

 

譜奏65

2017年5月19日

心が落ち着かない星消えの夜

いつもの静寂が機嫌を損ねて

悪意を向けるように

私に孤独を投げつけてきていた

明日になれば

いや夜明け前には

またいつものように気配を変えると

解っていてもやはり私は萎縮してしまう

萎縮は夜に逃れる私にとって

最大の罰なのに

明日を怖れていた私は今夜は囚われまいと目を見開いた

すると静寂は突如ピアノの倍音を殺すような呻きを漏らして

まるで私自身のようになって

夜に怯えを見せ始めたのだ

 

譜奏64

2017年5月17日

何かに迷ったら

迷うほどに選択肢があると考え

苦しいことがあったら

私は平安を知っているからと捉え

悲しみの時は

理を捨てられる自分であると

受け止める

それらは概ね

豊かなことだ

しかし愛

愛だけは試される

それは愛そのものが

嫉みの本質に

苦しんでいるせいだろう

 

譜奏63

2017年5月15日

冬の陽が

私の手を透かしてじゃれる午後

私は

私という主体を失くした後の季節に

この陽を揺らす風になれたらと

誰にともなく微笑んでみせた

思えば私は

私自身さえ懐かしいと思えることが

日常的にある人間だった

不思議とは思わない

特別とも感じない

だって花は花の色で

人は人の形で操られるように

生まれてくるのだから

 

譜奏62