2017年5月15日

冬の陽が

私の手を透かしてじゃれる午後

私は

私という主体を失くした後の季節に

この陽を揺らす風になれたらと

誰にともなく微笑んでみせた

思えば私は

私自身さえ懐かしいと思えることが

日常的にある人間だった

不思議とは思わない

特別とも感じない

だって花は花の色で

人は人の形で操られるように

生まれてくるのだから

 

譜奏62