2017年5月3日

氷河で削られてできた深い湖の

湖面のスクリーンに

いろんな色に変わっていく花や

木の葉が映っていた

それを見た少女は目を見開かせて

わずかに揺れる色を楽しみ

形を聞き

音を見つめていた

母を失くしていた少女はある日

湖に立って遠くに行くのと囁いた

だからもし空から見てるなら

これからはもう見ないでと言った

良いことは起こらないから

だからもう見ないでと囁いた

 

譜奏57

2017年5月1日

バラードの4拍子の中に

埋もれていた切ない時間が

無数の放物線のようになって

眠りを妨げる夜

親しんだフレーズに

耳を塞いだ手を

開かない貝の形にして

私は

異物のようになっている心が

身体から切り離されることを

祈るようにその静けさに委ねた

私は怯えていたのかも知れない

私そのものが変わっていく

確かな兆しに

 

譜奏56