伸び始めたばかりの葉に
どんなにやさしく雨が落ちても
やがて葉は風にさらわれ
恵みを受ける力を失う
悲しい出来事はその個に
唯一の動機を持たせることはない
人生は
気まぐれなテロメアが造る
ランダムな色彩のようだ
だからと私は思う
生きるという実態は今この時の
一瞬の
情熱の堆積にしか
見出せないのだと
譜奏61
伸び始めたばかりの葉に
どんなにやさしく雨が落ちても
やがて葉は風にさらわれ
恵みを受ける力を失う
悲しい出来事はその個に
唯一の動機を持たせることはない
人生は
気まぐれなテロメアが造る
ランダムな色彩のようだ
だからと私は思う
生きるという実態は今この時の
一瞬の
情熱の堆積にしか
見出せないのだと
譜奏61
夢を持つ
持ちなさい
この定型句を脅迫のように感じて
人は演技者の大人の素振りで
駆け引きを覚えると
それに花を添えるように
恋にも同じ振る舞いで向き合う
異質の血で拒み合う
汚れた注射器を使い回すように
次は人生?そのもの?
だったらぐるぐる回って
ぐるぐると
白く美しい夢箱の
回転木馬のように
譜奏60
私を支配してきた
パステル画のような色彩を
本質を
疑う夜
落としたグラスの
飛び散ったガラスの破片が
数え切れないパズルのように
私の足下で光っていた
人生は得るものなのか
費やしていく性質のものなのか
そう考えようとすること自体が
すでに
過ちなのかも知れないと
うそぶいているかのように
譜奏59
今日街で
寂しい人とすれ違いました
私に似た
痩せた輪郭の寂しさでした
なのにブラウスには赤と黄色の
薔薇の刺繍がありました
私は咄嗟にみすぼらしいと思い
尖った視線を投げました
その時不意に
その人が振り向きました
私と同じ色をした目でした
私は悲しい気持ちになり
私から逃げるように
背を翻しました
譜奏58