2017年9月1日

働き疲れた一日の終わりに

害のない夢に眠り

平坦に目覚め

いつもの道を歩いて

取るに足らない日常を過ごし

停止線のない日々を

貼り絵のように繰り返す

そんな自分を許せるのと

眠りの前につぶやきながら

私は雨が好きな訳じゃない

ただ青空が嫌いなだけ

青空は言うの

あなたはそこで何をしているのと

答えられない私を知りながら

 

譜奏109

2017年8月30日

長い昼が暗闇に包まれる頃

パステルカラーのブラウスを着た女性とすれ違った

そのすぐあとで

細めのスーツを着た若いサラリーマンが過ぎていった

信号に遮られて立ち止まったわずかな

何も考えないだけの時間

私は息を深く吸って

浅く吐き出しながら

小さな棘のように感じた違和感を

喧騒のない空に向けていた

信号を渡る羊の群れのような列に紛れて

私は不意な憎しみのように浅い音の先を強めて

ねぇどうしてみんな迷子のような顔になっているのと

物言わぬアスファルトに険しい衝動をぶつけていた

 

譜奏108

2017年8月28日

人は概ね死を語ることを避ける

どんな理由を言ってもそれは死を怖れているからだ

死の恐怖に侵されて生きるのは愚かには違いない

叶うなら人は概ね永遠に生きたいのだから

潮騒の遊ぶ砂浜を

薄い白のワンピースを着て歩いていたら

貝殻で足を傷つけて

私は膝を立てて砂に腰を下ろした

陽射しはカモメが連れ去り空は鈍色に近づいている

私は横たわり波音を並列に聞きながら

こうしていればいつか波が私を拐っていくだろうと思っていた

それが死が欠けることでも満ちることでも

ただ眠るように

たとえ今が夢でも現でも

 

譜奏107

2017年8月25日

乱数のように配置された星座の

屈折した光の残渣

漆黒だけの十二のタトゥー

人々の運命を分け

操りの量子を輝きの糸に撚り

放つかのような

悪魔的な神秘を月下に落とす

無機なるものの連続は

限りある時間を生きる者に感受を与え

感受は行き先を知らず

怠慢した恐れに行き着いていく

両手を空に残渣を受け

額ずかないと私は微笑む

決して運命になど

 

譜奏106