働き疲れた一日の終わりに
害のない夢に眠り
平坦に目覚め
いつもの道を歩いて
取るに足らない日常を過ごし
停止線のない日々を
貼り絵のように繰り返す
そんな自分を許せるのと
眠りの前につぶやきながら
私は雨が好きな訳じゃない
ただ青空が嫌いなだけ
青空は言うの
あなたはそこで何をしているのと
答えられない私を知りながら
譜奏109
働き疲れた一日の終わりに
害のない夢に眠り
平坦に目覚め
いつもの道を歩いて
取るに足らない日常を過ごし
停止線のない日々を
貼り絵のように繰り返す
そんな自分を許せるのと
眠りの前につぶやきながら
私は雨が好きな訳じゃない
ただ青空が嫌いなだけ
青空は言うの
あなたはそこで何をしているのと
答えられない私を知りながら
譜奏109
長い昼が暗闇に包まれる頃
パステルカラーのブラウスを着た女性とすれ違った
そのすぐあとで
細めのスーツを着た若いサラリーマンが過ぎていった
信号に遮られて立ち止まったわずかな
何も考えないだけの時間
私は息を深く吸って
浅く吐き出しながら
小さな棘のように感じた違和感を
喧騒のない空に向けていた
信号を渡る羊の群れのような列に紛れて
私は不意な憎しみのように浅い音の先を強めて
ねぇどうしてみんな迷子のような顔になっているのと
物言わぬアスファルトに険しい衝動をぶつけていた
譜奏108
人は概ね死を語ることを避ける
どんな理由を言ってもそれは死を怖れているからだ
死の恐怖に侵されて生きるのは愚かには違いない
叶うなら人は概ね永遠に生きたいのだから
潮騒の遊ぶ砂浜を
薄い白のワンピースを着て歩いていたら
貝殻で足を傷つけて
私は膝を立てて砂に腰を下ろした
陽射しはカモメが連れ去り空は鈍色に近づいている
私は横たわり波音を並列に聞きながら
こうしていればいつか波が私を拐っていくだろうと思っていた
それが死が欠けることでも満ちることでも
ただ眠るように
たとえ今が夢でも現でも
譜奏107
乱数のように配置された星座の
屈折した光の残渣
漆黒だけの十二のタトゥー
人々の運命を分け
操りの量子を輝きの糸に撚り
放つかのような
悪魔的な神秘を月下に落とす
無機なるものの連続は
限りある時間を生きる者に感受を与え
感受は行き先を知らず
怠慢した恐れに行き着いていく
両手を空に残渣を受け
額ずかないと私は微笑む
決して運命になど
譜奏106