長い昼が暗闇に包まれる頃
パステルカラーのブラウスを着た女性とすれ違った
そのすぐあとで
細めのスーツを着た若いサラリーマンが過ぎていった
信号に遮られて立ち止まったわずかな
何も考えないだけの時間
私は息を深く吸って
浅く吐き出しながら
小さな棘のように感じた違和感を
喧騒のない空に向けていた
信号を渡る羊の群れのような列に紛れて
私は不意な憎しみのように浅い音の先を強めて
ねぇどうしてみんな迷子のような顔になっているのと
物言わぬアスファルトに険しい衝動をぶつけていた
譜奏108