女が紅を引く時
紅は紅自身が繋げようと惑うように
いつも何かに向き合ってその線をなぞっている
二つしかない性を諦めるように
その一つの性を曖昧にでも果たすように
もしも繋げ向き合おうとするものに
鏡のように写るものが返ってくるのなら
それは見ないほうが良いと
おそらく全ての女は感づいている
そこにロジックは持ち込まない
本質が本質として外気に触れる時
女は幼くして自身を隔てることを
引く色でなぞるように
カモフラージュされてきたのだから
譜奏125
女が紅を引く時
紅は紅自身が繋げようと惑うように
いつも何かに向き合ってその線をなぞっている
二つしかない性を諦めるように
その一つの性を曖昧にでも果たすように
もしも繋げ向き合おうとするものに
鏡のように写るものが返ってくるのなら
それは見ないほうが良いと
おそらく全ての女は感づいている
そこにロジックは持ち込まない
本質が本質として外気に触れる時
女は幼くして自身を隔てることを
引く色でなぞるように
カモフラージュされてきたのだから
譜奏125
誰かからもらった玩具の花の首飾りを
寝ている時も首につけていたのに
ある朝中の糸が切れ
色とりどりの玉が道に散らばった
私は何にもしていないのに
ただ大切にしていただけなのに
私が初めて裏切りという感情を持った瞬間だった
言葉から作られて育つ信頼や愛を得たと感じても
それらは束の間に華やいで劣化してしまう
私は自然にそう疑う痩せた人間になっていた
兆しもなく切れたあの朝の糸のように
私の目に涙が滲んでいた
私は忘れていた
落ちていく花の玉を見ていただけの私の悲しみを
譜奏124
少し冷んやりとした心地よい風のような友人と笑いながら別れて
残り笑みが消えないうちに通り過ぎてきた私の目に
ゴミで吹き溜まった河の終わりが見えていた
どうしてだろうといつも思うけれど
私にはこの吹き溜まりのゴミが人にしか見えなくて
いつもとても悲しい気分になってしまう
空き缶が捨てられて道の端で錆びついてその周りに草が生えている
そんな景色もとても苦手だった
子供の頃から感じていたその感情の正体は何だろうと思った
しかしほとんど同時に
何人かいそうな私の胸の中の私の誰かがこうつぶやいてきていた
あなたはただ朽ちるのが怖いだけなの
周りはみんな朽ちていっても自分だけは咲いていたいの
たとえ徒花であってもと
譜奏123
音を高く低くして
胸の青い湖の水面を揺らす風の流量を
静寂は調整する
静寂が嫌うのは色彩だ
それは点を落とさず
不規則に水面にぶつかって
空間そのものを乱すと考えているからだ
色彩は静寂を好むのに
人の孤独を纏わってきた強い主体であっても
二つは交われない
横にしか動けず
面でしか存在できない
互いを異邦としか認識しない
弱い表面波のように
譜奏122