2017年10月18日

怖い夢

目覚めても思い出せない

怖い夢

長い間その源は

私の罪の腐臭だと思っていた

口を開けたくなかった

何故なら口の中は

夢カスの死んだような鉄錆の匂いしかしなかったから

弱り切った心が開き直った日

心は私に意外なことを教えてくれた

もう良いかしら

ナルシスの水面をみつめるあなたに

飽きちゃった

もう大丈夫ですよと

 

譜奏129

2017年10月16日

湖に沈んでいく秒の刻みの壊れた時間

歪んだ硝子の濃淡のように見せる宙に

あるいは湖面の騒ぎに

私は私の生きた時間をカラカラと奏でる映写機の音を

楽しみながら

私の愛した歌を聴きながら

老いを自覚する意識も忘れ

未来に向かうように沈んでいきながら

月の微光だけを頼りに写し出す私から

少しづつ少しづつ

秒の約束の比重の分だけ離れていく

もう私の言葉は水泡にしかならないから

私の人生は美しかったでしょと

月にだけ言って

 

譜奏128

2017年10月13日

耳をすまして風を聴き

目を閉じて太陽を感じ

足で地を確かめ

空気を手で掴み

過ぎゆく時を胸に響かせ

それらに心の鼓動を同調させて

今ある自分の命の軸に

重心を置く

日常を飾らず

形有るものに依存せず

畏怖を忘れない

そこからだ

それから初めて人は

言葉を持つべきなのだ

 

譜奏127

2017年10月11日

人は何かに沿って生きていく

シンプルに常識に

或いは自分に馴染む価値観に

納得した宗教などに

またはただあるがままに自然にと

心掛けるように心で整理して

それらに沿って生きていく

いつ盲目になってもいいかのように

私が家族より大切な出来事を胸に仕舞い込んだ時

街のイルミネーションは闇を弾いて青い一定の空間を創っていた

そんなことで私は確信していた

こうして生きていることさえ私さえ

気まぐれな欠片の断面を弾いた飛沫のような

蜃気楼の薄い光なのだと

 

譜奏126