怖い夢
目覚めても思い出せない
怖い夢
長い間その源は
私の罪の腐臭だと思っていた
口を開けたくなかった
何故なら口の中は
夢カスの死んだような鉄錆の匂いしかしなかったから
弱り切った心が開き直った日
心は私に意外なことを教えてくれた
もう良いかしら
ナルシスの水面をみつめるあなたに
飽きちゃった
もう大丈夫ですよと
譜奏129
怖い夢
目覚めても思い出せない
怖い夢
長い間その源は
私の罪の腐臭だと思っていた
口を開けたくなかった
何故なら口の中は
夢カスの死んだような鉄錆の匂いしかしなかったから
弱り切った心が開き直った日
心は私に意外なことを教えてくれた
もう良いかしら
ナルシスの水面をみつめるあなたに
飽きちゃった
もう大丈夫ですよと
譜奏129
湖に沈んでいく秒の刻みの壊れた時間
歪んだ硝子の濃淡のように見せる宙に
あるいは湖面の騒ぎに
私は私の生きた時間をカラカラと奏でる映写機の音を
楽しみながら
私の愛した歌を聴きながら
老いを自覚する意識も忘れ
未来に向かうように沈んでいきながら
月の微光だけを頼りに写し出す私から
少しづつ少しづつ
秒の約束の比重の分だけ離れていく
もう私の言葉は水泡にしかならないから
私の人生は美しかったでしょと
月にだけ言って
譜奏128
耳をすまして風を聴き
目を閉じて太陽を感じ
足で地を確かめ
空気を手で掴み
過ぎゆく時を胸に響かせ
それらに心の鼓動を同調させて
今ある自分の命の軸に
重心を置く
日常を飾らず
形有るものに依存せず
畏怖を忘れない
そこからだ
それから初めて人は
言葉を持つべきなのだ
譜奏127
人は何かに沿って生きていく
シンプルに常識に
或いは自分に馴染む価値観に
納得した宗教などに
またはただあるがままに自然にと
心掛けるように心で整理して
それらに沿って生きていく
いつ盲目になってもいいかのように
私が家族より大切な出来事を胸に仕舞い込んだ時
街のイルミネーションは闇を弾いて青い一定の空間を創っていた
そんなことで私は確信していた
こうして生きていることさえ私さえ
気まぐれな欠片の断面を弾いた飛沫のような
蜃気楼の薄い光なのだと
譜奏126