コンテンツへスキップ
何かで汚れていたヒールを履いていた女性は
目を閉じるように心を閉ざしたテーブルで脚を組み
浮かした踵を棄てるように投げ出していた
夜明けに思い描いていた5度の音階を急ぎ過ぎて
踏み誤った夜のフェスタからはぐれたように
ありふれていて意識さえ忘れていた静寂が揺れて
水時計の滴が落ち切ったような気配が聞こえていた
人は自分を知ることなど許されているのだろうか
夜の欠片が愛もなく憐れみをみせて
引き止める力を失くしていくことを楽しむように
マニキュアの雫が落ちたような赤を褪せさせていく
集められた燐光を母性のように誇張して
身を潜めていくように消えていくその影を
その陰のままに私に見せつけようとしているように
譜奏385
大切にしていた宝物が
手をすり抜けていく音を聞いた夜
誰もいない街を歩いたの
湖に沈むように
人は人をみつめて
ただ生きていけばいいって
やさしくささやいた声を
憎みながら
生きることのすべてが
造り物のよう
寂しげに重なった
紫の葉脈さえ
朽ちるを知るかのように奏でし
薔薇のセレナータ
譜奏384
水平線
遠くの波
明日という日
みつめた In BLue
海を棄てた人魚のように
空で生まれて
虹になる愛より
偽りの涙をひとしずく
罪深いわたしの手に
透明な水のように
生きていけたらいいのに
教えてください
奇跡
運ぶ祈り
譜奏383
明日
邪魔になる自分を捨てて
今日
さよならと言って
かざした手から
まだらに零れ落ちる
光の粒
人がやさしさだけで
生きられるなら
走ってきて
速く
森を過ぎ去る風のように
運命より
強く
譜奏382