深い黒のサラサラ髪を揺らして
抜けるような笑顔で友だち達と歩いていた
学生時代の彼女を思い出していた
久しぶりに会った彼女はカフェラテを両手で飲みながら
すごいの、会った時は指もちゃんと動かせなかったの
それがね、今はね、楽しそうに楽器を弾くのよ
すんごいうれしそうに笑いながらね、弾いちゃうんだよ
要約すると彼女は障害を持つ子供をサポートをする団体にいて
その子達の初めての演奏会があるから来てくれないかということだった
当日私は狭いホールの一番後ろの席に座って舞台を見ていた
正直演奏は聴くに堪えないものだった
でも何故か涙が出ていた
客もまばらな暗がりで雑に髪を後ろに束ねた彼女の姿があった
身を屈めてリズムを取る彼女を私は本当にただ美しいと思っていた
譜奏393