サンタさんのソリを引くトナカイの名前を
一つづつ人差し指を指しながら言ってる小さな子がいた
小さかった私はへえーっと思ってその子を見ていた
トナカイに名前なんてあったんだぁと思った
その子は私より小さかったのにすごいなと思った
しかしその子が指差す先には何もなく
同じことを繰り返して言っている姿がだんだん寂しそうにも思えていた
ダンサー!
彼女は最後に必ずそう叫びそのあとサンタの歌を歌った
その歌がなければきっと私には
トナカイの名前だとは分からなかっただろうと思う
ただそれだけの光景を今でも私は不思議な気持ちでよく思い出す
右手に持っていた食べかけのアイスクリームが溶けて
陽が燦々と降り注ぐ夏の午後のことだったからかもしれない
譜奏390