雑踏を過ぎる人々を
予めの気まぐれな春の前触れを
私はカフェの一面窓を射す陽に視界を歪ませながら
朽ちていく者たちを見送るように見ていた
私自身がそこに居ない安堵を
健やかな傲慢と自覚しながら
この世は根の区別されない価値を比較することで
曖昧なIDをカモフラージュしている曲者だ
寄り添うことに意味があるのかと問うことなど
虚ろな歪みのように萎えていく
極端な判断だろうと思う
しかし私の魂の根は確かに遠い喝采を感じ
私の中の異端を愛し始めていくのを
止められないでいた
譜奏55