2019年9月23日

忘れるという出来事は救いなのか呪いなのか

どちらにせよこれは最も答の出ない問いに違いない

思い出したくないことを消してしまおうと思ったら

人は過去を手放すしかないだろう

しかしそうしたとしても上手くいくとは思えない

記憶の分別は労多く実りの約束されない不毛な作業だからだ

私は案外忘れようとする意思がむしろウィルス化し

記憶に決して消せない瘢痕を遺すことになるのではと危惧している

潜在意識とはそれほどに思うようにならない得体無き魔物なのだ

やはり人は嗜好の都合で生きてはいけない生き物なのだろう

平坦な考えのように思うがすべてを受け入れてこその人生ではある

私はふと忘れてしまいたい出来事を箇条書きにしてみようと思い立ち

ボールペンを持ちノートの新しいページを開いて睨んでいたが

結局朝まで石のようになって一文字も書けない自分を笑っただけだった

 

譜奏432