2019年9月20日

似合わなくてもいい

私は少女の頃から赤いパンプスを履く自分を夢見ていた

そして18のある春の日にとうとう待ちきれなくなって

私は遠い街まで行って秘かに買っていた夢のパンプスを履いて

誰も私を知らない繁華街を女優のように微笑みながら歩いた

しかしその時不運の雨が降りだしてきて

私は身体より赤に合わせたブラウスよりパンプスが気にかかり

走ってカフェに飛び込んで新しいハンカチで雨粒を拭き取ったのに

何故かその時その赤が急に見飽きたもののように思えてしまって

やっぱり私には白のパンプスのほうが似合うように思えてきて

そう思ったらさらに赤が褪せたように思えてきて

シューズに履き変えて帰りの駅のゴミ箱に裸のままの赤を捨てていた

そしてふとこのブラウスは何てこのシューズと合わないんだろうと

悲しくなってなかなかこない電車を俯くように待ち侘びていたのだ

 

譜奏431