2019年1月11日

夢の中でしか思い出せないデッサンのような街を

粗い鉛筆の線で書かれた私が風に吹かれて歩いている

頬が丸くなって切ったことのない髪が短くなっていた

春の風が恋しいと思えるほど尖った風の中で

私は何処かに向かっている意識もなく

さらに歩いている実感さえ持っていなかった

ささやくようにかすかな雨の匂いがしていた

もし匂いを押しやって雨粒が落ちてきたら

この仮の絵にはきっと

雨のための新しい線が引かれるのだろうと思っていた

できることなら私はその線で重ねられて遮断されて

形を失くした雑線になっていたいと思った時

サテンのようにサラサラと揺れる髪が目に入って

この髪が消えてしまうのは少し悲しいとも思っていた

 

譜奏323