女性の心の形が悲しい器に思える時
晩課に集まる人びとの影になって
子を捨てる母親のように紛れていたいと
私は動かない時間を恨めしく思いながら
ぶつけるようにして顔を洗った
女性という性は何かを待つように造られていて
自分という意思が表面に表れるのは
その何かの後か線上のプロセスの点でのことでしかないのなら
私が今感じている不満は成立していない
ではその器は何かを選択して受け入れているのだろうか
そんなはずはないと私は鏡に向かって言ってみる
開けられた蛇口から生き物のような水線が飛び出していた
私は少し恐くなってタオルを被せて水を止めた
鏡に映る自分が静止していては形さえない器のように見えていた
譜奏299