波の刃が沈めた船がゆっくりと
踊るように海底に向かっていく映像を
私は繰り返し夢の中で見ていた
これは夢だと知りながら
叫んだ声が雪のような水泡に変わっていく景色を
美しいとさえ思いながら
ドアが開いて
誰かが入ってくる気配がして私は目を覚ました
犯人は風の軋みの残響が私の耳にぶつかって
私自身の意識が圧縮した中音の抵抗音だった
私は現実の中で生きていない
今日もまた私はそう思って
夢だと分かっていた雪の華を惜しむように
ペットボトルの水を半分飲み干した
譜奏211