2018年4月23日

眠る前に本を開いた時

スタンドの灯りがその時を待っていたように切れた

もう何度も読んだ本の文字を殺してあげると言うように

タイトルの文字が微灯に輪郭を作っている

愁いと癒着して離れない遠い過去を

卵のように淋しげに抱いている鳥の顔のようだ

銀の小さな鍵が見つからない

私は思い出したようにふとそう思っていた

その鍵は約束を交わした私以外の人が持つと

鍵穴で銀が溶けてしまうように作られている

約束をした誰かがそう私に言っていた

だから失くさないようにとそう話していた気がする

私の親指と薬指を癒着させるように付けさせて

確かにそう言っていた気がする

 

譜奏210