なんとなく空の何かを見上げるように
いつのまにか育った手の届かない胸の願望をみつめると
自分がいかにその願望に甘くて弱いかが分かる
それが十字架のように私を摑まえた憧憬の始まりだ
願望は色彩化した猜疑心で贋作を見抜くように
憧憬の正誤を精密なプロセスで見破ろうとする
光による損傷
異物の付着
顔料の退色
作業を確かめながら怠らない更なる猜疑
そして最後の確認の後に厳重に確かめるのだ
それが決して届かないところにあるというその一点だけを
無為に安心したように
十字架を握ったその手を投げ出して
譜奏169