2020年1月31日

寝そべっていた猫にダメな女を見流すようにあくびされて

私は小さな頃に机に置いていた黄色い笑い猫の貯金箱を思い出していた

最初はコトンとする音が面白くてその内にだんだんと重くなって

その手にかかる重さが重さの分だけうれしくなっていった

あの時の感覚が大人になるにつれて消えていってしまったのは

胸の中に貯まらない何かの質感のせいなのだろうかと思っている

夢を駈け抜ける

私の心は高熱に彷徨うようにその遠い喝采のざわめきを聞いていた

ある時は轟音のように

ある時は目を閉じて聴くわずかな凪の気配のように

だから私は身勝手に生きる

見えない何かが音を残して満ちていくあのときめくような質感を

私は重さとして心に落とすまで決して忘れることなどできないから

その質感の中で少女のままの私が戯れて笑っているのだから

 

譜奏488