寝そべっていた猫にダメな女を見流すようにあくびされて
私は小さな頃に机に置いていた黄色い笑い猫の貯金箱を思い出していた
最初はコトンとする音が面白くてその内にだんだんと重くなって
その手にかかる重さが重さの分だけうれしくなっていった
あの時の感覚が大人になるにつれて消えていってしまったのは
胸の中に貯まらない何かの質感のせいなのだろうかと思っている
夢を駈け抜ける
私の心は高熱に彷徨うようにその遠い喝采のざわめきを聞いていた
ある時は轟音のように
ある時は目を閉じて聴くわずかな凪の気配のように
だから私は身勝手に生きる
見えない何かが音を残して満ちていくあのときめくような質感を
私は重さとして心に落とすまで決して忘れることなどできないから
その質感の中で少女のままの私が戯れて笑っているのだから
譜奏488