2019年5月13日

虹のように消えていく

大切な時間を胸に

あたためながら

祈る手は怯えていた

キレイに生きてきたと

言えない私だけれど

あなたの笑い声が

すべてをやさしくして

気がついたら

一人で泣いていたの

身体を捨てて心を捨てて

あなたの吐息だけを感じて

力の限り抱きしめていた儚い夢を

さ迷いながらみつめた星のように

 

譜奏375

2019年5月10日

深い海の色が

なんだかさびしいね

過ぎてしまうだけの夢を

追いかけているようで

人は風のように

どんなに愛しても

いつか開いた手を

すり抜けていくね

少しだけそばにいてと

言っていたのに

振り返らなくなった時を

私を思い出す

あの日憎しみのように

捨てたはずの街なのに

 

譜奏374

2019年5月8日

風に吹かれて

何かを待ちわびたような二人の

祈りの形

砂の薔薇の花

あした占う東の空に伝えて

翔ぶ鳥よ

揺れる涙で

サヨナラと書いて

もう戻れないとわかっているから

希いは虚しく

麻の糸では繋げないことを

束の間に

儚く宙に舞って

なくなっていくだけなのに

 

譜奏373

2019年5月6日

淋しげな細い雨

私の傘に

言葉のように落ちて

セピア色の悲しい映画のように

一瞬の過去になっていく

南に歩いていけば

潮騒が聴こえてくるはずと

私の中のカモメがまた

私に嘘をつく夜

錆びついた古い鍵の形が

ゆっくり冷めていく珈琲のように

曖昧な苦さで

私の胸に流れていくの

ただ灼かれてしまうほどに

 

譜奏372