2019年4月10日

老いし人

幸あるものになれと言い

旅人は

華抱く者にと希う

いつの日か

生まれ変わって蝶になり

あなたの心に翔び舞いたいの

幻のように

千年桜

散れど咲き散りぬ

吾が手にふわり愛しく

儚く消え

女に生まれしこの身を嗤う

欠けた月に

 

譜奏361

2019年4月8日

夢だけ一つ

渇いた胸に閉じ込めて

変わらない日々を

睨むように

生きていたあの頃

私はただ

生きる意味を遠ざけて

荒むほどの熱もなく

膝を強く抱いていただけだった

何かの遠吠えのような風が過ぎた夜

起伏もなく泣いている涙に気づき

私は激しく自分を嫌悪してそして

噛んでいた唇を開いて言っていた

これでいい訳ないじゃないと

 

譜奏360

2019年4月5日

刻むことをためらうように

静かな夜に遅れていく

私の中の

時計の音

祈りの罪が

失なうことで償えるなら

この身を投げ出しても

愛した人の手をこの胸に

やさしく引いていたいだけだった

正しく生きて何があるの

途切れた指先の時間を一人

歪んでいく灰のようにみつめていたの

 

譜奏359

2019年4月3日

人の命はひしめきあって

一つに揺らぎ

流れつく川の

波間に消えて

忘れられていく

光たちのよう

ただ一生懸命に生きて

何一つ残らないような

陰に包まれていても

胸は空に

花に舞うように

風に運ばれてくるような

運命を

確かな力で

 

譜奏358