老いし人
幸あるものになれと言い
旅人は
華抱く者にと希う
いつの日か
生まれ変わって蝶になり
あなたの心に翔び舞いたいの
幻のように
千年桜
散れど咲き散りぬ
吾が手にふわり愛しく
儚く消え
女に生まれしこの身を嗤う
欠けた月に
譜奏361
老いし人
幸あるものになれと言い
旅人は
華抱く者にと希う
いつの日か
生まれ変わって蝶になり
あなたの心に翔び舞いたいの
幻のように
千年桜
散れど咲き散りぬ
吾が手にふわり愛しく
儚く消え
女に生まれしこの身を嗤う
欠けた月に
譜奏361
夢だけ一つ
渇いた胸に閉じ込めて
変わらない日々を
睨むように
生きていたあの頃
私はただ
生きる意味を遠ざけて
荒むほどの熱もなく
膝を強く抱いていただけだった
何かの遠吠えのような風が過ぎた夜
起伏もなく泣いている涙に気づき
私は激しく自分を嫌悪してそして
噛んでいた唇を開いて言っていた
これでいい訳ないじゃないと
譜奏360
刻むことをためらうように
静かな夜に遅れていく
私の中の
時計の音
祈りの罪が
失なうことで償えるなら
今
この身を投げ出しても
私
愛した人の手をこの胸に
やさしく引いていたいだけだった
正しく生きて何があるの
途切れた指先の時間を一人
歪んでいく灰のようにみつめていたの
譜奏359
人の命はひしめきあって
一つに揺らぎ
流れつく川の
波間に消えて
忘れられていく
光たちのよう
ただ一生懸命に生きて
何一つ残らないような
陰に包まれていても
胸は空に
花に舞うように
風に運ばれてくるような
運命を
確かな力で
譜奏358