夜の風を怖がったようなネコが
人を避けて路地に消えていく時に
私の目と鉢合わせになって挑むように見返していた
私の優しさはいつものように表に出ず
その小さな体を案じているのにと思っただけだった
私の心の鏡は何かの意図のように私を曖昧にしか写さない
そのフラストレーションに原罪の無形な気配が膨らむ
人間は天使にも悪魔にもなり切れないなんて軽口を言って
そんな大人好みの光沢をしたファンタジーに飛び込んで
そんなイラストの中の私になって
神さまに一つだけ希いを言えるなら
私の中でいつまでも消えないいくつかの時間に
自由に催眠術をかけることの出来る力をと
今夜私はきっとそう言うだろう
譜奏192