聖書に手を置いて
平気で嘘をつく人の胸に
悪意が無かったら
罪は神通力を失い
対比する言語さえ見当たらない
人を捕らえている境界線のような区切りは
何の基準によるものなのだろうか
この社会そのもの
それとも個体としての痛みの記憶から生まれた
防御
きっとどちらも違うのだろうと思いながら
私はある事を決心しようとしていた
夢で焼いた讃美歌の炎が苦しそうな声になって
揺れながら消えていくのを待つように
譜奏196
聖書に手を置いて
平気で嘘をつく人の胸に
悪意が無かったら
罪は神通力を失い
対比する言語さえ見当たらない
人を捕らえている境界線のような区切りは
何の基準によるものなのだろうか
この社会そのもの
それとも個体としての痛みの記憶から生まれた
防御
きっとどちらも違うのだろうと思いながら
私はある事を決心しようとしていた
夢で焼いた讃美歌の炎が苦しそうな声になって
揺れながら消えていくのを待つように
譜奏196
感情の5つの階段を上ろうとすると
最初に拒否という札が掛かっているという
危うい人もいるからと受け入れて
ふと考えて左足から上っていく
私は右利きだからだ
両足の膝が立つ位置に2つ目の札が見えてくる
怒り
コレは概ね予想がついていた
また気が進まないままに膝を立てると次は取引と書かれてある
意外な感じがしたので急いで四段目に行くと
抑鬱の札
私は動物的に激しく笑った
こんな事をさもロジック風味に仕立てている人間が
ただのおバカにしか思えなかったから
譜奏195
眠れぬ夜を過ぎて
その理由に行き着けないまま
雨だから開ける必要もないカーテンの無地をみつめて
私はその無地に同調していく私の精神を
引き止める単語を呪文のように探す私に衰弱していた
そして溢れるように動いて
自分の変化を喜んで引っ越しした時に買った2対の
今は時の曇りが痣のようになっていたグラスを
投げ割った
主の顔も声も浮かばない黒白の名刺を
何かのモニターを覗くように
そこに写っているはずの確かに居たウェーブの
髪を揺らしていたはずの私を
探しているかのように
譜奏194
ふと気分がしなやかな夜
人は過ちもあった過ぎた日を振り返り思う
自分は精一杯生きてきたのだろうかと
少しばかり正しいとばかりは言えなくとも
自分なりには懸命に生きてきたはずだと
そしてそれは概ね正しくその人は賢明な人だと言える
何より明日に前向きな姿勢がその人の基本にあるからだ
私の周りにいるそういう人は振る舞いも柔らかく
自制された忍耐強さを持つ愛すべき人達だ
しかし私はその人達と話していると
いつも疎外されていく自分しか感じないで生きてきた
何故だろうと思った時期もあったが理由ははっきりしている
私は振り返ってしまえば未来という獣が
自分の後ろに立っている気がしてならなかったのだ
譜奏193