2018年3月9日

今日

都会では珍しい白い鳥が飛んでいるのを見た

私はその名前を知らない

そう思った時

その回路の先に懐かしい感情を置き忘れていたことを思い出した

ある日初めて夢というオーロラを見上げながら

私が感じていたのは希望というものではなかった

ただ私はこの夢が何の痕跡もなく消える日のことを恐れたのだ

得ることより失うことに過敏な私を嗤うように

根を探れない暗室のような部屋に切れ落ちた音が

無地の栽落のように反応して

私自身さえ写せない感光板のように

不機嫌な銀溶液に小さく

悲しいリズムのように揺れていた

 

譜奏191