めずらしく都会が星明かりに包まれていたのに
透みきるはずの私の胸は淋しさでいっぱいだった
空も街も人も夢もいつか消えていく
この数日そんな幼い感傷から抜け出せないでいたせいだ
懐かしいと言ってもいいくらいの
もうとっくに卒業したと思っていた感傷だった
しかし私はこの淋しさが嫌いじゃなかった
むしろここにしかない甘酸っぱい切なさに
心が持ち上がっている自分を感じることができていた
人の感情は本当に一筋縄じゃいかない
人はその人そのものがミステリアスなのだ
淋しさって悪くない
何か不思議な結び付ける力のようなものを持っている
私はそう思ってもう一度星明かりの空を見上げていた
譜奏259