道に横たわる人を一瞥して通り過ぎていく人波を外れて
私は注意深くその人に近づいて
小さないびきを聞いてほっとした気持ちになった
彼はただ酔い潰れていただけの人だった
都会ではありふれた光景だから
一々構う人はなくまたその必要もないのかもしれない
しかしあまりにも何もなかったような人波が
私にはひどく身勝手で憎らしいものに思えた
彼の身なりがみすぼらしいことも一瞥の理由だったのだろう
人間が苦心して進化させてきた文明も裏へ回れば汚れが目につく
この意識は利便だけを食べて示唆をゴミにしてきた人間の
不感の罪が流す下水なのではと思った
やや過剰とは思いながらもしも音楽と教会がなかったら
この国はもっと病みの中にいたのかもしれないと思った
譜奏258