南の海流から砂浜に流れ着く瓶の中に
異国の魔術師が閉じ込められていて
蓋を開けてくれた少年の願いを3つ
お礼に聞いてくれるという物語があった
胸をときめかせた私は自分のことのように
発熱したように指を折って希いを数え始めた
希いは右の手を使い果たして左の小指を折り
左手を全部握ってもまだ行き着かず
私は枕の下に頭を入れて息を止めて怒っていたことを思い出す
その頃の夏
父が庭にオリーブの木を植えた
私はリンゴか蜜柑がいいと言って拗ねた
父亡き後の春にオリーブは花を咲かせ秋に実をつけた
葉を落とした冬の枝が寡黙な父の希いのように思えた
譜奏235