2018年6月20日

南の海流から砂浜に流れ着く瓶の中に

異国の魔術師が閉じ込められていて

蓋を開けてくれた少年の願いを3つ

お礼に聞いてくれるという物語があった

胸をときめかせた私は自分のことのように

発熱したように指を折って希いを数え始めた

希いは右の手を使い果たして左の小指を折り

左手を全部握ってもまだ行き着かず

私は枕の下に頭を入れて息を止めて怒っていたことを思い出す

その頃の夏

父が庭にオリーブの木を植えた

私はリンゴか蜜柑がいいと言って拗ねた

父亡き後の春にオリーブは花を咲かせ秋に実をつけた

葉を落とした冬の枝が寡黙な父の希いのように思えた

 

譜奏235