2018年6月18日

少女の黄色い服が風の中で揺れている

少女は道の真ん中で踊っている

酒瓶を手にした男たちが踊りを囲むようにたむろしている

少女の透き通った表情が無垢ゆえに生け贄のように見えた

親を知らないアンの黒い瞳と長い髪

時を背にして遺された哀しい物語の本

月の灯りに本の表を映させて

私は何度もそうしてきたように

その悲しみを好み幼い秘密を守るように陰に隠していた

泥の匂いを食べたように周りを見回していた

そして待つように

本の挿絵で目が合ったジプシーの老人が

杖をついた手を止めて振り返り

憐れむように私を見ているような気がしていた

 

譜奏234