悲劇を作品にするアーティストの拠り所は
演出のイマジネーションを与えてくれる妄想の熱の精度にある
ただの現実にそんな力など無く
不幸を悲劇にまで高めるには雑多な悲しみなど
焼き切るほどの価値しかないということだ
透明なるイミテーション
その努力された透度だけが熱を伝える力なのだよと
夢か幻想かも理解しない私の
心のスキを突いた同行者が小声を残して消えた午後
あっという間に私の身体を覆い尽くすように
驚く間も無く白い蝶が集まってきて
同じ白の霧に包まれた花園に眠る妄想に私は置かれて
変化していた私はこの今が途切れないことを希ってしまっていた
貪欲にしか見えない白の脆い静止を楽しむように
譜奏199