2017年9月11日

明るい場所

薄暗い場所

明るい場所の陰

薄暗い場所の明かり

人一人の心の中の

一人の場所

咲いて落ちていく

月下美人の花びらの

形のままの陰を覆う

夜の闇

白いがゆえの

影の闇

暗いがゆえの

白き花弁

 

譜奏113

2017年9月8日

私のおとぎ話は

絵本や玩具や片時も離れない縫いぐるみなどが

絵本は絵が

玩具は玩具が

縫いぐるみは縫いぐるみ自身が動いて

私の目に話しかけてきて

一緒に遊びだす特別な空間だった

その空間に一人でいたいと思うようになった寂しい夜

私に対価の憎しみを吹き込んできたのは

変貌していくことでしか流れない時そのものだった

打ち捨てられた波が脱塩していく時間のように

私は長い間その様子を眺めていた気がする

一生消えないと思える悪意を感じながら

私は何故か頬を緩めて微笑んでさえいたのだ

 

譜奏112

2017年9月6日

自分が年老いる実感を認めた夜

私は咄嗟にカーテンを破るように開け

蒼白く滲む半月を見上げた

あなたは

変わらない

少なくとも100年ぐらいの間は

追いかけるように生きてきた時間が

費やされるものに差し替えられることを

素朴に認めなければならないことに

鼓動に反応した心臓から血が引いていく

傷ついた花枝を手折るようにでも

誰か言って

私は魔物の矢に酔って

熱の夢を見ているのだと

 

譜奏111

2017年9月4日

星に希いを

月に祈りを

その気になれば

聖人にもなれる

その気になれば最低の悪女にだって

演じるのなら

大して無理なくやれる

だって自分以外になるテキストは

この世に溢れているのだから

何にだってなれるの私は

自分以外になら

見上げた希いを祈りを

偽りに星を月を

殺してさえしまえばいいのだから

 

譜奏110