私のおとぎ話は
絵本や玩具や片時も離れない縫いぐるみなどが
絵本は絵が
玩具は玩具が
縫いぐるみは縫いぐるみ自身が動いて
私の目に話しかけてきて
一緒に遊びだす特別な空間だった
その空間に一人でいたいと思うようになった寂しい夜
私に対価の憎しみを吹き込んできたのは
変貌していくことでしか流れない時そのものだった
打ち捨てられた波が脱塩していく時間のように
私は長い間その様子を眺めていた気がする
一生消えないと思える悪意を感じながら
私は何故か頬を緩めて微笑んでさえいたのだ
譜奏112