夜の静寂に溶け込んでいく時
私の精神は癖のように一つの問いにつかえる
自分の心の闇に気づいてしまった人は
その闇に入り込んで
正体を探ろうとすればいいのか
それとも
新しい光をみつけて
その闇そのものを照らしてしまおうと
外に目を向けて足掻けばいいのかと
しかしそのつかえは軽い痒みを残すだけで
いつも私の精神から後ずさっていく
愛されなかった天使が
授けられていない断定を見破られて
飽きた笑みで翼を翻すように
譜奏74
夜の静寂に溶け込んでいく時
私の精神は癖のように一つの問いにつかえる
自分の心の闇に気づいてしまった人は
その闇に入り込んで
正体を探ろうとすればいいのか
それとも
新しい光をみつけて
その闇そのものを照らしてしまおうと
外に目を向けて足掻けばいいのかと
しかしそのつかえは軽い痒みを残すだけで
いつも私の精神から後ずさっていく
愛されなかった天使が
授けられていない断定を見破られて
飽きた笑みで翼を翻すように
譜奏74
真面目な人は好きなのに
真面目を売りにする人を嫌うようになったのは
その人というより
そんな時間の空間が
息苦しいと感じるようになったせい
私は深く考えず長い間そう思っていた
しかし息苦しさは疎ましさに変わり
疎ましさは言葉では表せない排他心へと偏っていった
心のバランスが危うくなって放置できないと怖れた時
弾けるように私を襲った解放は
私自身にとって最も残酷な
その毒に呼応して
新しい変化を待ち望んでいた
私自身の快楽なのだと実感していた
譜奏73
花は
散ることで
その命を教える
そして似たプログラムの
人の命の究極は
愛でしかない
しかしそれを言葉に飾ると
蜘蛛の唾液が
空気に触れて糸状になるように
形無いものが
不意に形を得て
人は毒されていくのだ
約束を忘れたアダムとイブの
二番目の罪をなぞるように
譜奏72
窓を流れる景色など
私には意味がなかった
私が私の欲望を乗せたこの列車の
座席に座っているという
事実以外には
生まれてからこの瞬間まで
私は変わらない祈りを持ち続けてきた
天が訝るほどに
そして今私は私の終着駅へと向かっている
ホームに降りたら私はゆっくり歩き
やさしく息を吐き階段を上るだろう
凛とさせた背を過ぎし日の私に残して
私だけを乗せる終着駅発の
運命の線路を走る列車に乗り換えるために
譜奏71