2017年6月12日

夜の静寂に溶け込んでいく時

私の精神は癖のように一つの問いにつかえる

自分の心の闇に気づいてしまった人は

その闇に入り込んで

正体を探ろうとすればいいのか

それとも

新しい光をみつけて

その闇そのものを照らしてしまおうと

外に目を向けて足掻けばいいのかと

しかしそのつかえは軽い痒みを残すだけで

いつも私の精神から後ずさっていく

愛されなかった天使が

授けられていない断定を見破られて

飽きた笑みで翼を翻すように

 

譜奏74

2017年6月9日

真面目な人は好きなのに

真面目を売りにする人を嫌うようになったのは

その人というより

そんな時間の空間が

息苦しいと感じるようになったせい

私は深く考えず長い間そう思っていた

しかし息苦しさは疎ましさに変わり

疎ましさは言葉では表せない排他心へと偏っていった

心のバランスが危うくなって放置できないと怖れた時

弾けるように私を襲った解放は

私自身にとって最も残酷な

その毒に呼応して

新しい変化を待ち望んでいた

私自身の快楽なのだと実感していた

 

譜奏73

2017年6月7日

花は

散ることで

その命を教える

そして似たプログラムの

人の命の究極は

愛でしかない

しかしそれを言葉に飾ると

蜘蛛の唾液が

空気に触れて糸状になるように

形無いものが

不意に形を得て

人は毒されていくのだ

約束を忘れたアダムとイブの

二番目の罪をなぞるように

 

譜奏72

2017年6月5日

窓を流れる景色など

私には意味がなかった

私が私の欲望を乗せたこの列車の

座席に座っているという

事実以外には

生まれてからこの瞬間まで

私は変わらない祈りを持ち続けてきた

天が訝るほどに

そして今私は私の終着駅へと向かっている

ホームに降りたら私はゆっくり歩き

やさしく息を吐き階段を上るだろう

凛とさせた背を過ぎし日の私に残して

私だけを乗せる終着駅発の

運命の線路を走る列車に乗り換えるために

 

譜奏71